監事   前田 百合

 

福祉事業のなかで、高齢者のお世話をする仕事、いわゆる介護サ-ビスと呼ぶ分野のお仕事があります。平成12年4月から施行された介護保健法により高齢者福祉の世界は大きく変わりました。

以前は社会福祉法人が独占していた分野にも、株式会社やNPO法人等が、どんどん進出してきています。特別養護老人ホ-ム・養護老人ホ-ム・軽費老人ホ-ム・介護老人保健施設・グル-プホ-ム・小規模多機能・デイサ-ビス・デイケア等、入所系や通所系の事業所が続々とオ-プンするとともに、訪問介護や訪問看護等の在宅サ-ビスも充実しました。

利用する人は、これらの中から、どんなサ-ビスを、どの事業者に頼むか?

自分で選ぶのです。選んだら一般の商取引と同じように契約をします。こういう関係からか、事業者は利用者に対して「お客様」という意識が強くなり、利用者は介護保険料を払っているからというわけではないでしょうが、「権利」を主張する人が増えているように思います。

お客様に満足して頂けるサ-ビスを提供するには、それなりの人手が必要になります。その上に施設が大幅に増えているのですから、人員不足に悩まされるのは当然なのかも知れません。

フィリッピンやインドネシアなど、東南アジアの国から、看護師や介護士の実習生を日本が受け入れていることは、皆さんも新聞やテレビでご覧になったことがあるでしょう。また、介護ロボットが開発され、実用化に向けて特別養護老人ホ-ム等でテスト使用されているのはご存知ですか?あと10年~20年後には、外国の介護士やロボットにお世話になる時代が来るのかも知れません。

 

もう一つは認知症患者の増加です。

アルツハイマ-や脳血管疾患等が原因で脳に異状が起り、日常生活にも支障をきたすようになる病気です。未だ治す薬はできていないようですが、進行を遅らせる薬はありますので、他の病気と同じように早期発見・早期治療が大切です。

認知症も軽度のうちは自宅で介護できますが、徘徊や昼夜逆転の症状が出始めると、一時も目が離せず、介護者の方が参ってしまい、共倒れになってしまうケ-スが見られます。症状は、大人しくて可愛い人もいれば、暴言や暴力をふるう人、被害妄想になる人等いろいろです。ただ、理解力や判断力が著しく低下するのは共通しているようです。

一人暮らしや高齢者だけの世帯が増えているなかで、認知症になってしまったら、どうすればいいのでしょうか?

最近よく、子供の世話にはならないと仰る方にお会いします。私も誰の世話にもならず、自分で自分の面倒は見て生きていきたいと思っていますが、そのためには、ピンピンコロリが条件ですね。怪我をしたり病気になったりした時はどうしましょう。やはり誰かのお世話にならなければ、一人だけでは生きていくのは難しいようです。住み慣れた町で、何時までも暮らしたいとは、誰もが願うことでしょう。

行政でも今、福祉の充実と共に地域の力に注目し、隣近所で見守りができる組織作りや、介護予防につながるグル-プの活性化や育成にも力を入れています。

 

何時までも元気で楽しい日々を過ごす、この手助けをするのが、福祉のひとつの目的だと私は思っています。

まずは自分の事は自分で!

健康管理や生き甲斐作りを心掛けましょう。それでも上手くいかない事は、自分一人で抱え込まずに、家族やご近所の力を借りましょう。その時、福祉の専門家に相談すれば、良いアドバイスが得られるはずです。自助・共助・公助を上手に使って、心豊かな生活が送れると良いですね。

世界的に例を見ない高齢社会、この現状を支えられるのは、福祉に従事する方々の力と優しさだと思います。今は未だ、賃金や労働条件が良い職業とは言えません。でも、近い将来、福祉職の重要性が正当に評価され、改善されることを強く望み、期待している一人です。